コールサックシリーズ

林田悠来詩集
『晴れ渡る空の下に』

ささやかな幸せを共につくっていくことと、
たちはだかる厳しい社会現実。
精神の闇も体験した元記者は願いをこめて、
詩をおくる。
いまを生きる心の声がさわやかな志で響く。

解説文:佐相憲一
四六判/128頁/上製本 ISBN978-4-86435-071-6 C1092 ¥1500E
定価:1,620円(税込)

「晴れ渡る空に下に」解説

林田悠来詩集『晴れ渡る空の下に』 

発売:2012年7月17日



【目次】

Ⅰ 季節の結び目

コスモスの花 
金色のカーテン 
秋の夜 
大晦日 
烏 
愛の華 
目黒川の桜 
黒目川の桜 
宇宙の星 
燕のように 
広葉樹 

Ⅱ 日食と叫び

日食 
オセロゲーム 
精神病棟24時 
老人
そううつ病(双極性障害) 
ただ前に 
散歩 
ヒント 
歩み続けよう 
悠々と 
年賀詩 
晴れ渡る空の下に 

Ⅲ 3・11

溢れた海 
モアイ像 
花火 
北リアス線開通
夜明け 
グリーンの風
丸い月 

Ⅳ 旅と列島

鶴見線 
神保町の一角で 
台風 
マングローブ 
由布島 
花の浮島 
夢の浮島 
宮島そして広島 
横浜の海 

Ⅴ 共に

共に 

あとがき     
略歴       


詩篇

「コスモスの花」


東京郊外の広い公園に
コスモスの花が広がる
黄色やピンクや赤の絨毯のように

その花びらの美しさに魅かれて
君が写真を撮る
自らの美しさを振り撒いて咲く
コスモスの花には
ミツバチが群がる
そのミツバチが受粉させ
花は種を作る
いつからそんな命の連携の営みが始まったのか
そんなことに心をとらわれながら
写真を撮る君の姿を
じっと眺めている



「精神病棟24時」


朝6時に起床
7時半には朝食
丁寧に作られた食事はわずか十分足らずで空になる
毎回食後は薬を飲むのに並ぶ
躁や鬱、統合失調症、解離性障害、
様々な人たちがいる
月、水、金の午前中には風呂に入る
服が溜まると洗濯をする
何故か3階の比較的症状の軽い人が先に入るように
2階の入り口にはカギがかかる
その後は喫煙室で談笑したり
ベッドに入って横たわる者もいる
広い食堂を歩き廻っている者もいる
午前、午後も読書三昧
昼食は12時でご飯の前には必ずテレビを消す
あらかたの人がご飯を食べ終わるとすぐにテレビをつける
先に見ていた人がチャンネル権を得るが
後から来た人が勝手にチャンネルを変えてしまう場合もある
午後はOTに行ってオセロゲームや将棋、折り紙などをする
1週間に1度食事のグループがある
食事の献立を考え次の週に食事をつくる
毎週1回グループというのがあり好きなことを勝手にしゃべる
午後にコーヒーとお茶が飲めるお茶会というのもある
差し入れのお菓子を食べながら歓談する
午前と午後の開放時間には3階のみ扉が開放され買い物が自由になる
2階の人は看護婦の付き添いで買い物ツアーをやるそうだ
週に1度カラオケマイクを使って歌を歌ったり
2週に一遍卓球をしたりする
土曜日の夜は生のピアノ演奏によるカラオケだ
OTとそのときは男女混合となる
6時の夕食後わずか2時間足らずで眠剤の時間になる
夜中は一時間ごとに懐中電灯で見回りに来る
ここは概して優しい人が多い
そう、ここは心に傷を負った人のオアシスなのだ

*OTは作業療法のことを言う。



「晴れ渡る空の下に」


どんよりとした雲
さきほどからぱらぱらと雨が降り
それがより一層僕を憂鬱にさせる
出口の見えないトンネルから
いつ晴れ渡った空の下に
飛び出せるのだろう

気持ちは循環する
時には崖から落ち
這い上がれないほど傷ついたり
時には舞い上がり
上機嫌すぎて周囲の人を傷つけてしまったり
そんな自分に戸惑いを覚える
自分の気持ちをコントロールすることの難しさ
相手の気持ちを思いやることの難しさに
胸が苦しくなることもある
それでも人は独りでは生きられない
皆に支えられて生きているのだ

生きている中で
つまずくことは数多くある
それでもその都度立ち上がり
その先を目指して人は歩き続ける
時には苦しくて投げ出しそうになることもがあっても
決してあきらめずに歩き続けるのだ
人生に無駄なことなど何一つない
つまずいてもつまずいても
その都度這い上がって
その先を目指して
ひたすらに
信じる道を歩き続けるのだ

晴れ渡る空の下
希望に満ちあふれた日々が訪れるように



「丸い月」


久々に丸い月を見た

のんびりと輝いているようにも見えた

だが太陽の光で反射していることを
僕らは普段気にしていない

太陽光はいろんな惑星を輝かせて
古代から楽しませてきたのに

今、都会の光が奪っている


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